静岡からの出張の帰り、ヘトヘトになりながら牛丼の松屋へ入った。
ランチにはもう遅すぎる、晩飯にはちょっと早い、という時間帯。店内はガランとしていて、客はボク一人だけ。
券売機で牛飯と豚汁を買ってカウンターでチケットを渡す。
2分もかからない間に牛飯と豚汁が出てくる。
ヘトヘトの体に流し込むように牛飯をかきこんでいたら、お客が一組入ってきた。
入口を背にしていたボクは、たいして気にもせずにいたのだが、入ってくるときの足取りや空気が気になって、チラっと見たら、かなりご年配のご夫婦。
身なりのしっかりした、二人とも穏やかな感じの方。
松屋では券売機で先に買う、ということを知らなかったらしくて、カウンターに腰かけて店員さんが来るのを待っていた。
店員さんがくると、旦那さんのほうが「まぐろの山かけ丼をください」と注文。
食券を買ってないお客さんには慣れているようで、店員さんもとっさに対応した。
「まぐろの山かけ丼、二つですね(^^)」
ところが、その旦那さんは、「いえ、申し訳ないんだけれども、ひとつだけお願いします。それですみませんが、取り皿か器のようなものを一ついただけませんか?」と言った。
店員さんは一瞬躊躇したようだったけど、そこもすぐ応対してくれて、「ハイ、かしこまりました。では、先にお会計をお願いいたします^^。」と言ってくれて・・・スムーズに事は運んだんだけれども・・・
お金を支払う時になって、たまたま目に入ってしまって注視していたボクは、なんだか切なくなってしまった。
そのご夫婦のお財布の中には、どうやら小銭しかはいっていないようなのだ。
490円の会計だったようなのだが、奥さんが、10円玉や5円玉をジャラジャラと出して数えて、店員さんに「こまかいお金でごめんなさいね。ちゃんとあるかしら?数えてもらえますか?」と言いながら出していた。
店員さんも、ニコニコと応対してくれて、「え~と・・・100円・・・200円・・・ハイ、確かにちょうど、お預かりします(^^)」と言ってくれていたので、なんとなくボクもホッとしていた・・・その直後・・・
マグロの山かけ丼が出てくるまでのほんの少しの間の、そのご夫婦の会話が耳に入ってしまい、どうしようもなく切なくなってしまった。
「だいじょうぶか?足りるか?」
「ええ、私ひと口でいいから、お父さんたくさん食べてくださいね」
「とりあえず、次のお金が入るまでは、ガマンガマン、だね・・・」
ボクは黙々と食べるふりをしていたけれども・・・
その会話を聞いていて、ボクはどうしようもなく切なくなってきてしまって・・・
見ず知らずの、他人のことなんだけれど・・・
あまりに切なくて、涙があふれてきそうになったけど・・・
泣いたりしたら、変に思われるから、とにかく下を向いてムシャムシャ牛丼を食った。
豚汁をかきこんで、水を一杯グっと飲んで・・・
「ごちそうさま」と言ってお店を出るところまでこらえるのが限界だった。
お店を出て、事務所へ帰る道すがら、涙があふれて止まらなくなった。
どうして、がんばったボクらの大先輩が、たった490円のご飯を食べるのに、なけなしのお金を払わなきゃいけないような暮らしをしなきゃならないんだ!!