ラクをする事の弊害

kissy(岸本圭史)

2006年02月14日 12:00

ある建設関係の知人(一級建築士)に聞いた話。
マンションや病院などの大きな建物の、構造計算というのは、「こういう方法でやりなさい」という確実な手法があるわけではないそうです。鉄筋の量だけ見たら、少し少なくても、壁やその他の構造材によってきちんと強度を保てるものもあれば、十分な鉄筋量なのに、そもそも鉄筋の素材や使い方が適切でないために、数値上クリアしていても、実際の強度は保てない、という事もあるそうです。本当にその建物が地震などの災害に耐えうる強度を持っているか?は、ハッキリ言って「コンピュータのソフトで数値を入力しただけでは、まったくぜんぜん、一つも正しくわからない」のだそうです。

よく話を聞いてみると、構造計算に携わって本当にがんばっている建築士さんたちは、コンピュータのソフトで数値をはじくなんてことはほとんどせず、現場で実際の構造物や鉄筋をチェックし、工事の手順や職人さんたちの作業まで細かく指示をしながら、休むまもなく働いて、強度を保つための対策を講じるのだそうです。

彼いわく、「構造計算ソフトなんかで数値だけはじいて設計なんかしたら、鉄筋量ばかり不経済に増えて、その実、本当の強度は保てない、なんていうとんでもないシロモノしかできない。」のだそうで・・・・さらにこうも言っていました。「構造計算ソフトで構造物の本当の強度が判定できるなら、構造計算をする建築士なんて要らないでしょ?新卒で実務経験なし、なんていう頼りない人でもできてしまうようなレベルの低い計算しかできないから、構造計算ソフトは危ないんだ」と・・・。

ここでも、コンピュータという、「大変な作業をラクにする」ための機械を安易に使ってしまうことの大きな弊害が出ているんだなあ、とつくづく思ったKissyです。

関連記事